弁護士報酬にはクレジットカードが使えないのか

 今まで、弁護士報酬をクレジットカードで支払うことはできませんでした。アメリカやドイツでは、普通にしていることです。日本では、なぜできないのでしょう。

 それは、日弁連が平成4年に、カード決済を自粛するように会員である弁護士に要請したからです。なぜかというと、カードを利用すると、弁護士がカード会社に事件を紹介してもらうようになったり、費用が高額化したりするので、相当でないから自粛しろというのです。相当でないと言われると、弁護士は慎重ですから、もしかしたら懲戒されて資格を取り上げられるかもしれないと考えるのです。これでは、うっかりカードを利用できません。

 でも、今の時代、いかにも不便です。

 そこで、こんな自粛要請は、そろそろ見直そうかということになりました。ところが、地方の弁護士会の多くが見直しに反対しました。これを受けて、今年3月18日の日弁連の理事会では、平成4年の見解は見直さないことにしました。

 このことについて、3月20日付朝日新聞朝刊は、「弁護士報酬カード払いダメ」と報じています。依頼者が、弁護士に支払う報酬をクレジットカードでするのは許されないという内容です。「カード利用を発端とした多重債務問題が解決していないうちに、カード会社と手を組むのはおかしい」という、「日弁連のある幹部」の意見も紹介されています。日弁連の方針に理解を示す記事です。

 ところが、3月21日付読売新聞夕刊では、「いまどき、解禁見送り、弁護士報酬カード払い・・・日弁連に弊害論」という記事が掲載されています。カード決済を導入している大阪の弁護士のコメントも紹介されています。そのコメントによれば、「これだけカードが普及し、依頼者にも便利なのに認めないとは、弁護士業界はあまりにも世間知らずだと笑われる」というコメントが、引用されています。こちらは、日弁連の方針に、批判的な内容の記事です。

 朝日と読売は、同じ機会に日弁連の同じ人に取材したようです。同じように取材しながら、これだけ視点が違うのは、興味があります。

 しかし、実は、両方の記事とも、少しずれています。3月18日の理事会の結論は、一応自粛を求めていますが、弁護士報酬の支払いに関して、クレジットカード決済を利用した場合、ただちに、懲戒処分の対象になるものではないことも明言しています。これは、今までにないことです。そして、懲戒処分の対象になる場合を、3点指摘したのです。

 ① カード会社が、カード会員に対し、加盟店としての一般的な紹介を超えて、積極的に弁護士を紹介した
  ような場合

 ② 弁護士が、依頼者と紛争になり、カード会社に依頼事件の情報を知らせた場合

 ③ 債務整理や倒産事件の依頼者の着手金の支払にカードを利用したような場合

 裏返せば、これら以外の場合は、懲戒にならないということです。今まで、どういう場合が懲戒になるか、はっきりさせないまま、カード決済を利用するのは、止めなさいと言ってきたことからすると、大きな前進です。もちろん、懲戒にならなければ、何をしてもよいというわけではありません。しかし、本来、弁護士が、自由に行うことができる業務に、規則違反もないのに、みだりに介入するのは、おかしなことです。そういう点でも、日弁連の従来の見解には、批判がありました。

 そこで、今回、日弁連は、日弁連が懲戒処分になるといって、弁護士の業務に介入するのは、どういう場合かをはっきりさせたのです。それ以外の場合は、日弁連として、個々の業務に介入しない態度を示したのです。
 
 カード会社に対しては、消費者救済の観点から、地方の弁護士会を中心に、まだまだ強い反発があります。そういう状況下で、日弁連も従来の態度を180度転換するのは、難しいと思ったのでしょう。他方で、何とか、カードのサービスも提供したいと考える弁護士の要望にも配慮したわけです。

 そもそも、全面禁止なら、①、②、③のような場合が問題になるというようなことを、ことさら言うはずがないのです。ここは、日弁連執行部の苦悩の選択です。

 市民感覚としては、今どき、カードも利用できないなどというのは、時代遅れだという読売の記事が、ぴったりきます。実際、多くの弁護士も、自分で買物する場合には盛んにカードを利用しているのです。自分のお客にだけは、現金を持ってくるか、振り込むようにしろなどと言うのは、どんなものでしょう。私は、少なくとも、気恥しく思います。目先の理屈に捕らわれて、自分のしていることが身勝手だということが、よく分かっていないような気がするのです。

 いずれにしても、どういう場合に、カード決済を利用してはいけないのかは、今回の日弁連の意見で明確にされました。当事務所でも、できるだけ早く、カードが利用できるようにしたいと思っています。

 カードを利用するかどうかは、最終的には、お金を払う側の利用者が決めることです。この視点は、大切にしたいと思います。

                                             以 上
author 小原 健